認知症の治療ガイド

-パーキンソン病の脳深部刺激療法-

パーキンソン病の脳深部刺激療法

パーキンソン病

手足の震えや筋肉のこわばりといった運動障害が起きるのが、パーキンソン病の特長です。詳しい原因は不明ですが、ドーパミンという脳内の神経伝達物質が不足するために起きます。50-60歳代に多く、患者は国内で約10万人、国の特定疾患(難病)に指定されています。

ドーパミンを薬で補うのが治療の基本ですが、病気の進行に伴って効果が徐々に薄れてきます。服用始めは薬がよく効いていますが、次第に症状が進行し、薬の量を上限まで増やしても足が動かなくなり、顔の筋肉のこわばりで言葉すら出ないような状態になったりします。

脳深部刺激療法

日大板橋病院(東京・板橋区)脳神経外科では、脳に電極を埋め込んで、電気刺激を与える「脳深部刺激療法」の手術を行っています。この手術は1970年代末から痛みの治療法として研究され、意思と関係なく、震えるような不随意運動を抑える効果もあるとして、パーキンソン病にも90年代から導入され始めました。

電気刺激装置は、バッテリーを含むパルス(電気抽動)発生装置と電極からなり、規則的に電流を送ります。狭心症の治療に使う心臓ペースメーカーを、脳に応用した形です。

手術はまず、MRI(磁気共鳴画像)で撮影した脳の画像を基に、コンピューターを使い、電極を埋め込む位置を決めます。

頭部に二か所の穴を開け、脳の視床下核という部分に、極細の電極の針を刺します。1ミリの位置のずれで効果に大きな違いが出る、精密さを要求される手術です。

さらに、右鎖骨下を切り開いて胸にパルス発生装置を埋め込み、脳に刺した電極と線をつなぐ手術を行います。微弱な電流の刺激が、神経伝達の流れを調節し、不随意運動を抑制すると考えられています。

睡眠時は電流を切っても良いですが、基本的に24時間、流したままです。月に一度通院し、効き具合などを見てもらい電流を調整します。体外からのリモコンで、操作が可能になっています。

完全に元通りになるわけではありませんが、服のボタンを留めたり、食べ物を口に運んだりといった日常の動作ができるまでに回復します。ドーパミンを補う薬の量は、手術前より少なくなります。

ただ、脳の深部にかかわる手術だけに危険もあります。最も重大なのが脳出血で、約2%に起こります。またパーキンソン病そのものが治るわけではないので、効果がいつまで続くかは、病気の進行にもよります。すでに最重症の人では、この手術をしてもあまり効果が期待できません。中程度の病状の人が、最も適していると言われます。

手術は2000年から保険適用になり、特定疾患の認定患者は、さらに公費負担が受けられます。

パーキンソン病の薬物治療

パーキンソン病の治療の基本は、脳内の神経伝達物質ドーパミンが不足しているのを、薬で補うことです。

代表的な薬は、脳内でドーパミンに変化する物質を補充する「Lドーパ」という薬です。

効果は強い反面、吐き気や幻覚といった副作用を引き起こすこともあります。最大の難点は、何年も使っているうちに、しだいに効き目が落ちることで、量を増やすにも限界があります。

このためドーパミンを受け取る側の神経細胞の働きを強めようという「ドーパミン受容体刺激薬」もよく使われ、新薬の開発も進められています。

関係医療機関

日大板橋病院脳神経外科


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